ジカ熱で注目される「小頭症」の原因や症状、予後について解説

小頭症の原因のひとつとされているジカ熱。ブラジルをはじめとする中南米中心に大流行していますね。ジカ熱は対岸の火事ではなく、日本でも感染者は確認されています。これは日本国内で感染したのではなく、海外で感染し帰国後に発症したというもの。妊娠中の女性がジカ熱に感染した場合、小頭症の原因になるとCDCにより証明されました。ここでは小頭症の原因や気になる症状、予後について解説していきます。

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小頭症は?

妊娠中の女性が感染すると小頭症の原因になるということから、小頭症という病名を初めて知ったという方も多いと思います。

小頭症の赤ちゃんが生まれる割合は、数千人に1人と稀な疾患で、先天性と後天性とに分けられます。

先天性の小頭症は頭が非常に小さく生まれ、脳が未発達で短命の場合がほとんどです。

後天性の小頭症は狭頭症とも呼ばれ、区別されることもあります。通常であれば赤ちゃんの頭蓋骨は完全にくっついていない部分があるため、脳や体の成長とともに大きくなりますが、頭蓋骨が早期にくっつくため頭が成長することができません。

脳の機能は正常な場合が多く、手術での治療が可能とされています。

ジカ熱で注目される「小頭症」の原因や症状、予後について解説

小頭症はエコー検査で

小頭症は妊娠28週頃から診断できる可能性が高くなってきます。妊娠中はできる検査も限られているので、エコー検査では診断できないこともあります。

出生後24時間以内に赤ちゃんの頭囲を計測し、WHOの成長基準と照らし合わせて、小頭症の疑いがあればさらに詳しくX線、CT、MRIなどで脳の画像診断を行い、さらに血液検査や尿検査を行って確定します。

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小頭症の原因と症状

小頭症はニュースでも話題のジカ熱以外に、いろいろな原因があります。

遺伝

先天性の小頭症では、遺伝が原因のひとつだと考えられています。遺伝による小頭症の発症率は3~5万人に1人の割合なので非常に稀です。

遺伝が原因の小頭症はマウスによる研究によって、胎児期に治療を行うことで回復できる可能性が期待されています。

子宮内感染

妊娠中に妊婦さんが感染症にかかることで小頭症の原因となってしまいます。小頭症の原因になる感染症は、ジカウイルス、トキソプラズマ、ヘルペス、風疹、サイトメガロウイルス、梅毒、HIVなどです。

中でも最近はジカウイルスによる小頭症の赤ちゃんの出産数が急増し、海外だけでなく日本でも注目を集めています。

有害物質への曝露

身近なところでいうと喫煙やレントゲンなどの放射線、アルコールがありますが、それ以外には重金属(ヒ素・水銀)への曝露が小頭症の原因となることがあります。

栄養供給障害

胎児期に胎盤の異常などにより赤ちゃんに栄養が行き届かないと、赤ちゃんが重度の栄養失調状態となり、十分な成長が見られず小頭症の原因となることがあります。

頭蓋骨早期癒合症

通常赤ちゃんの頭蓋骨は2歳頃まではくっつきませんが、何らかの原因によって早期にくっついてしまうと頭が成長しません。後天性の小頭症の原因です。

小頭症の症状としては、頭が小さく、額の位置が後ろで顔が歪んで見える、眼球突出、低身長という外見上の症状以外に、知能発達の遅れや食欲不振、けいれん発作、頭痛、視覚障害が見られます。

後天性の小頭症(狭頭症)では知能発達は正常であることがほとんどです。

ジカ熱で注目される「小頭症」の原因や症状、予後について解説

気になるジカ熱とは

小頭症の原因として日本でも知られるようになったジカ熱。CDCが2016年4月13日にジカ熱の原因であるジカウイルス感染により、小頭症や脳障害を引き起こされていると結論づけたという発表がありました。

ジカウイルスは蚊により媒介される感染症ですが、実は感染しても約8割の人には症状があらわれないのです。また発症しても軽度の発熱や頭痛、発疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛程度で症状自体も4日~1週間ほどで治まってしまうので単なる風邪で済まされることも多いようです。

日本でもほとんどの地域に生息しているヒトスジシマカという蚊が、ジカウイルスを媒介します。

今のところ日本での感染報告はありませんが、海外で感染した人が日本で蚊に刺され、その蚊が別の人を刺してしまったらジカ熱に感染する可能性が出てきます。

ジカ熱は発症した場合でもそれほど深刻な症状は出ませんが、妊娠中の女性は別と考えてください。

感染している妊婦さんから生まれる赤ちゃんは約3割が小頭症を発症するといわれますが、感染していてもほとんどが発症しないので、自分が感染していることにも気づかないことがほとんどです。

公園など蚊が多いところに行くときには対策をしましょう。

ジカ熱で注目される「小頭症」の原因や症状、予後について解説

小頭症の予後は?

小頭症の予後は先天性か後天性かによって違ってきます。

小頭症は程度や合併症の有無などが寿命に関係してくるため、どのくらい生きられるかを一概にいうことはできませんが、先天性の場合には早期の死亡率が高く、後天性の小頭症は手術やリハビリが必要になりますが、比較的長生きが可能とされています。

病状が深刻なケースでは出産後すぐに亡くなってしまうこともあります。

外科的な手術では頭蓋骨を切断して組み換えを行い、頭蓋内腔容量を広げたり、呼吸が苦しい場合には口腔外科的治療も行われます。

ジカ熱で注目される「小頭症」の原因や症状、予後について解説

小頭症の予防法

小頭症の原因はいろいろありますが、予防方法は現在でははっきり見つかってはいません。ですが、基本的に妊娠中は人ごみを避けたり、虫よけ対策を行ったり、ストレスをためずにリラックスできる環境を作ることが大切です。

ジカ熱が流行する地域への渡航を避けたりするなど、普段よりも慎重に行動するようにしましょう。