「早期母子接触(カンガルーケア)」という言葉を知っていますか。「早期母子接触(カンガルーケア)」はお母さんにも赤ちゃんにも良い効果をもたらすとして日本でも広まりました。しかし、一方で「早期母子接触(カンガルーケア)」の最中に、悲しい事故も起こっています。
今日は、「早期母子接触(カンガルーケア)」の効果やリスクについてご紹介します。「早期母子接触(カンガルーケア)」のメリット、デメリットを理解し、自分と赤ちゃんにとってより良い選択をしましょう。
「早期母子接触(カンガルーケア)」とは?
「早期母子接触」は南米のコロンビアで始まった育児法で、出産してすぐの赤ちゃんとお母さんの肌と肌を触れ合わせるよう、お母さんの胸の上に直接赤ちゃんを抱かせるケア方法です。直接肌と肌を触れ合わせて抱く姿ががカンガルーに似ていることからカンガルーケアとも呼ばれるようになりました。
日本では、最初、入院が必要な新生児の赤ちゃんのケアとして「早期母子接触(カンガルーケア)」が取り入れられました。お母さんが赤ちゃんと面会する際に、直接肌と肌を触れあって抱っこすることにより、出産後すぐに離れて過ごすことになったお母さんと赤ちゃん双方の不安を軽減したり、親子の結びつきを促す効果を期待しての試みでした。
それが、入院の必要がない、予定日通りに生まれた赤ちゃんにも、出産直後の「早期母子接触(カンガルーケア)」がお互いの愛情形成に良い影響を与えるとして広まっていきました。
早期母子接触の効果
では、「早期母子接触(カンガルーケア)」にはどのような効果があるのでしょうか。
赤ちゃん側のメリット
「早期母子接触(カンガルーケア)」が赤ちゃんにもたらす最大の効果は安心感です。産まれたばかりの赤ちゃんが、肌と肌をお母さんと触れ合わせることにより、お母さんのぬくもりを直に感じながら体を保温し、呼吸も安定するというメリットがあります。
突然羊水に包まれて生活していたお腹の中から、外の世界に出てきたわけです。お腹の中で聞いていたお母さんの心臓の音や声を聞くことで赤ちゃんの不安な気持ちも和らぐのかもしれませんね。
お母さん側のメリット
「早期母子接触(カンガルーケア)」を行なうメリットは赤ちゃんだけでなくお母さん側にもあります。「早期母子接触(カンガルーケア)」を行なうことにより、母親になった実感が沸きやすくなるという心理的な効果だけでなく、直接赤ちゃんと触れ合うことによって母乳の分泌を促したり、子宮の回復を早める効果もあるのです。「早期母子接触(カンガルーケア)」により、産後に有効なホルモンが分泌されやすくなるのですね。
知っておきたい早期母子接触のリスク
赤ちゃんにもお母さんにもメリットのある「早期母子接触(カンガルーケア)」ですが、残念ながら悲しい事故も報告されています。
「早期母子接触(カンガルーケア)」のリスクとしては、長時間の陣痛で疲れ切ったお母さんに赤ちゃんをしっかり支えてあげる体力が残っておらず、赤ちゃんを落としてしまうという危険や、室温が低い分娩室で行われた場合には、赤ちゃんが低体温症になる可能性、うつ伏せ抱きによる赤ちゃんの窒息や、赤ちゃんの急変に気づきにくいというものがあります。
「早期母子接触(カンガルーケア)」による事故がいくつか報告されたことから、医療機関では「早期母子接触(カンガルーケア)」を行なう際には医療従事者が注意深く観察するなど対策がとられるようになったり、また、十分な安全管理が約束できない場合には「早期母子接触(カンガルーケア)」は行わないという選択をする病院もでてきました。
早期母子接触を安心して行うためには
赤ちゃんにもお母さんにもメリットを伴う「早期母子接触(カンガルーケア)」ですが、リスクがあることも理解しておかなければなりません。では、実際に出産の際に「早期母子接触(カンガルーケア)」を行ないたいと考えた場合にはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。
まずは、病院で「早期母子接触(カンガルーケア)」のメリット、デメリットをより詳しく説明してもらい、理解したうえで行うこと、赤ちゃんの様子を注意深く観察する医療従事者が付きそうか、赤ちゃんの呼吸を管理できるモニタリングをつけて確認できるようにすること、赤ちゃんの急変に対応できる施設を選ぶこと、赤ちゃんの様子がおかしいと感じたり、出産で疲れて安全に行う自信がないときには、迷わず病院スタッフに伝える勇気が必要です。
まとめ
「早期母子接触(カンガルーケア)」は産まれたばかりの赤ちゃんがお母さんと肌と肌を触れ合わせることにより、安心感から呼吸が安定するだけでなく、お母さんも子宮の回復が早くなったり、母乳が出やすくなるというメリットがあります。そして、なによりも、今までお腹の中にいた赤ちゃんを実際に自分の胸で抱くことによって、深い愛情や絆を感じることができるという効果があります。
しかし、一方で、「早期母子接触(カンガルーケア)」を行なう際に注意をしないと事故が起こるリスクも否定できません。特に産まれて24時間以内の赤ちゃんは急変しやすい状態ですので、「早期母子接触(カンガルーケア)」を行なう、行わないに限らず注意が必要な存在だからです。
「早期母子接触(カンガルーケア)」を行ないたいと考えても、出産する産院で「早期母子接触(カンガルーケア)」について消極的だったり、施設やスタッフが整っていない場合には慎重に考えましょう。
命がけの出産で出会える我が子です。是非、安心した状態で迎えてあげてくださいね。