妊娠中には特に食べ物の注意が必要になります。そのなかでもよく注意されるのが、お刺身など生で食べる魚です。お寿司をよく食べる人にとっては、妊娠中お刺身が食べられなくなるのは辛いもの。さまざまな食事制限があるだけに、何が大丈夫なのかわからなくなってしまいます。そこで生魚がなぜNGなのか、その理由とともに注意したい生魚について詳しくご紹介します。
妊娠中のお刺身がNGなのはなぜ?
妊娠中はさまざまな理由から、お刺身は食べない方がいいとされています。
1.食中毒の可能性
妊娠中は免疫力が低下していることから、妊娠していない人よりも食中毒にかかるリスクは高くなっています。生魚はリステリアという細菌に感染していることが多く、通常であれば問題のないこの菌によって、食中毒を起こすことがあります。リステリアは生魚以外にも、カマンベールチーズやブルーチーズ、ハムやソーセージなどにも含まれている可能性がありますが、加熱すれば問題はありません。
2.寄生虫の可能性
生魚には寄生虫がいる可能性もあります。サバやイワシ、あじなどに寄生するアニサキスは、胃にかみつくため激しい腹痛が起こります。食中毒ではないため、吐き気はありますが下痢などの症状はありません。加熱かマイナス20度以下の環境で24時間以上冷凍をすれば死滅しますが、目視することが難しいため、知らずに食べてしまうこともあります。
3.水銀摂取の可能性
ほかの魚を食べる、いわゆる食物連鎖の上位にいる魚には、海に存在するメチル水銀を多く含んでいます。また川魚でも水質汚染がある場所でとれた魚には汚染物質が含まれている可能性があります。妊娠していない人であれば、大量摂取をしない限りは体外に排出されるのも問題はありません。しかし妊婦さんの場合は、胎盤を通して母体から胎児に水銀が流れ、胎児に影響を与える可能性も。もちろん少量であれば問題はありません。
特に避けるべき生魚
生魚のなかでも、加熱や保存状態で危険を回避できる食中毒や寄生虫とちがい、水銀は除去する方法がありません。そのため、妊婦が避けるべき生魚は、特にこの水銀を多く含む魚だといえます。もちろん一切食べることが禁止されているのではなく、摂取量に注意が必要とされています。
できるだけ摂取を控えるべき生魚
本マグロ、メバチマグロ、さわら、スズキなど。刺身1食分、80gを1週間に1回程度の摂取にとどめる。
食べてもいいが量に注意すべき生魚
ぶり、たら、金目鯛、ミナミマグロなど。刺身1食分、80gを1週間に2回程度の摂取にとどめる。
このほか、安価で購入した魚の場合は代用魚かもしれません。マグロの代用魚であるアカマンボウは、水銀を多く含む魚なので、食べ過ぎには注意が必要です。
注意すれば食べても良い生魚
摂取量に特に制限のない魚がこれにあたります。イワシやあじ、サンマやサバ、キハダマグロのほか、エビやカニがあります。
マグロは上位の魚であるため、妊娠中には食べない方がいいとされていますが、マグロのなかで特に注意すべきなのはメバチマグロと本マグロなので、それ以外のマグロは大丈夫です。
魚貝類を食べるときに注意することとは?
食べる量に注意すれば問題がないとはされていますが、できるだけ赤ちゃんに影響を与えたくないと考えている場合、また食中毒や寄生虫は体力的精神的にも辛いものなので、そのリスクはできるだけ避けたいものです。
魚貝類を食べる場合、注意したいことをご紹介します。
新鮮なものを食べるようにする
購入する際には、賞味期限とともに、魚の状態もよく見てから買うようにしましょう。個人で釣り上げた魚は、新鮮であっても処理の仕方が十分でないこともありますので、やめておきましょう。
しっかり加熱する
加熱することで食中毒や寄生虫のリスクは軽減できますが、DHAやEPAといった不飽和脂肪酸は加熱することで失われてしまいます。青魚のなかでも水銀の含有量の少ないサンマやサバの新鮮なものを食べるといいでしょう。
お寿司屋さんにいったときに食べてもいいネタ
週一度程度なら問題ないとはいえ、お寿司屋さんではついつい食べ過ぎてしまう可能性もないとはいえません。ここでは妊娠中でも食べることができるネタをご紹介します。
イワシ
鮮度が良くないと刺身にできないので、これを出しているお寿司屋さんならほかのネタも安心して食べることができます。イワシにはEPAやDHAが多く含まれ、血液をさらさらにする効果があります。
サーモン
抗酸化作用のあるアスタキサンチンを多く含んでいます。ただし寄生虫がいる可能性がありますので、加熱したものを食べましょう。寄生虫は酢では死なないことが多いので、注意が必要です。
エビ
水銀をほとんど含んでいないため、安心して食べられます。エビに含まれるキチンには、脂質や糖質の吸収を抑える働きがあります。
たこ
肝機能を改善し、コレステロールを減らす効果、また体力をつけるタウリンを多く含んでいます。たこもエビと同様に水銀をほとんど含んでいません。
いくら
魚卵は高タンパクでありながら低脂肪であるため、妊娠中にはおすすめの食材です。しかしいくらは加工時に多くの塩分を含みますので、食べ過ぎには注意が必要です。
卵やカッパ巻きなど
生魚以外の食材を使ったものなら問題はありません。
このほか、貝類は加熱すれば問題はありませんが、ノロウイルスの感染の危険性もありますので妊娠中には食べないことをおすすめします。
妊娠中は食べるものに注意が必要なため、禁止されることでストレスがたまりがちです。特に生魚は食中毒などから下痢や嘔吐の症状が起きると体力を奪われてしまうため、できるだけ食べない方がいいとされています。
過剰に摂取しなければ大丈夫だとされていますし、出産後母乳に水銀が入り込むことはありませんので、心配であれば妊娠中だけと割り切ることも必要です。