妊娠の喜びで心がいっぱいになっていても、気を付けておきたいのが体調の変化。とくに妊婦さんは思いがけない体のトラブルに注意しておく必要があります。そのうちのひとつが『妊娠糖尿病』です。体重管理をしていても発症することがあるので、病気のことを知っておくと安心できますよ。
妊娠糖尿病とは?
『妊娠糖尿病』とは、妊娠をきっかけに発症する糖代謝異常のことを言います。妊娠期間に発症したり定期検査で発見されたりしたものを指すもので、糖尿病よりも軽度なのが特徴です。もし重度の糖代謝異常が発見された場合には『妊娠中に診断された明らかな糖尿病』と判断され区別されます。
これは妊娠糖尿病の基準より数値が高く、糖尿病の基準を満たすということ。妊娠中に合併症を引き起こしたり、将来の糖尿病発症率が高くなるため、厳しい管理とフォローアップが必要になります。もし妊娠前から糖尿病を患っていた場合『糖尿病合併妊娠』となります。
妊娠糖尿病を発症する原因には、妊娠の影響で血糖値が上がりやすくなることが挙げられます。お腹の赤ちゃんのエネルギー源はブドウ糖です。赤ちゃんが少しでも大きく育つように、妊婦さんの体はブドウ糖を赤ちゃんへ優先的に流すようになります。妊娠前は、摂取されたブドウ糖は脾臓から分泌されるインスリンの影響でエネルギーに変換されます。
ところが、妊娠をすると胎盤からインスリンの働きを鈍くするホルモンが分泌されるので、体に摂り込まれたブドウ糖は母体ではなく赤ちゃんへと流れていきます。このタイミングで甘いものを多く食べると、血液中のブドウ糖が分解されにくくなっているため血糖値が急上昇し、妊娠糖尿病を引き起こします。
一度発症すると、その後の妊娠時も発症しやすくなることが分かっています。また、こ妊娠後も糖尿病になる確率がアップするので注意が必要です。
妊娠糖尿病が危険な理由
次に、どうして妊娠糖尿病がそんなにも注意しておきたい病気なのかをお話しましょう。
妊娠高血圧症候群の危険性
以前は『妊娠中毒症』と言われていましたが、2005年4月からは『妊娠高血圧症候群』と呼ばれることになりました。
妊娠するとおなかの赤ちゃんに栄養や酸素を届けるため、血液量が妊娠前の1.5倍に増加します。ところが、何らかの理由で血液がスムーズに流れなくなると、少しでも赤ちゃんに栄養を送ろうとして、体が無理に血流を上げようとします。これが妊娠高血圧症候群の原因です。
この病気は赤ちゃんが十分に育たない『胎児発育不全』や『胎児機能不全』を引き起こすことがあり、低体重児や低酸素症で脳に影響を及ぼす可能性もあるのです。
母体への負担も増加し、大量出血を起こす『常位胎盤早期剥離』や痙攣を起こす『子癇発作』などは最悪の場合死に至る危険性があります。そのほかにも、『脳出血』『肺水腫』『腎・肝機能の障害』などが合併して起こることも考えられます。悪化した場合には、妊娠高血圧症候群を発症する危険が高まるため、注意しなくてはなりません。
流産・早産の可能性
妊娠糖尿病は、それが原因でさまざまな合併症状を起こす可能性があります。そのうちの一つが流産や早産です。例えば、上記で少し触れた胎児発育不全が原因でうまく育たず、流産になることがあります。また、羊水過多になれば子宮が圧迫されておなかが張りやすく、その影響で子宮収縮が促進されて早産や早期破水のリスクも高くなります。
難産の危険性
赤ちゃんのエネルギーの源は、ブドウ糖であることは上記でご紹介しました。妊娠中期から後期にかけては、赤ちゃんの成長するスピードも速くなり、おなかがどんどん大きくなります。ただ、この時期に高血糖になると赤ちゃんへのブドウ糖供給量も増えることになり、4kg以上の巨大児出産になる可能性があります。
巨大児の出産は、難産や赤ちゃんの鎖骨骨折などのケガの可能性、母体の出血多量の危険性もあり、リスクが高くなります。
発育不全、奇形のおそれ
妊娠糖尿病が悪化すると、胎児に心筋症や新生児血糖、奇形、発育遅延などの影響を与える可能性があります。
妊娠糖尿病の予防法
妊娠糖尿病が及ぼす影響はとても大きいことが分かりました。では、どうすれば予防することができるのでしょうか?
食事の内容を見直す
妊娠糖尿病の予防として最初に言えるのは、糖を摂り過ぎないことです。脂っぽい食べ物を控え、魚や野菜など和食を中心としたメニューに切り替えましょう。以下の点に気を付けておくと予防に役立ちますよ。
・糖分や脂肪分の多いクッキーやケーキなどは控える
・果物には糖分が多く含まれているため、食べ過ぎには注意をする
・ファーストフードやコンビニのお弁当、インスタントラーメンなどの食べ過ぎにも注意をする
食事の際にはゆっくり噛んで食べ、副菜や汁物など、炭水化物の入っていないものから先にいただきましょう。
バランスのとれた食事
栄養バランスを考え、魚や肉だけでなく野菜や海藻類、大豆製品、きのこ類なども積極的に摂り入れましょう。
洋菓子や果物にも気を付けて
糖分や脂肪分の多いクッキーやケーキなどはできるだけ控え、食べるときがあれば量に気を付けてください。果物には糖分が多く含まれているため、こちらも食べ過ぎには注意をしてください。
手軽な食事も要注意
ファーストフードやコンビニのお弁当、インスタントラーメンなどの食べ過ぎも妊娠糖尿病を引き起こす可能性があるので気を付けておきましょう。
運動も大切!
安定期に入ったら、こまめに体を動かしましょう。適度な運動はカロリーを消費してくれるので体重の増加を抑えてくれます。また、筋力を鍛えることで出産時や育児の体力作りにも繋がります。「妊婦だから安静にしておかないと…」と運動をせずに寝てばかりでは、体力が衰えて出産の時間が長引いたり、育児の際にすぐ疲れてしまいますよ。
なにより妊娠糖尿病になりやすくなるので注意が必要です。
何事も無理は禁物
妊娠糖尿病を予防するためには、バランスのとれた食事と運動が大切です。とはいえ、無理をして母体に負担が掛かっては心配になりますよね。運動をしている途中で体調が悪くなったり、おなかが張る場合には、無理をせずに横になったり座ったりして体を休ませてください。