頬がりんごのように真っ赤になることで有名な「りんご病」。
「よく知らないけど、子どもがかかる病気」
と思っている方も多いと思いますが、
実は大人もりんご病に感染します。
さらに、妊婦さんがりんご病に感染した場合、
流産や死産に繋がる恐れもある、非常に注意が必要な病気なんです。
妊婦さんが感染してしまうことを防ぐため、
りんご病がどのように感染を広げていくのか、
どのように予防すれば良いのかなど、
りんご病という病気についてご紹介します。
りんご病とは
リンゴ病とは、
ヒトパルボウイルスB19というウイルスに感染して発症する感染症です。
正式名称は「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」といい、
感染すると頬に「紅斑」という赤い湿疹が出て
りんごのように真っ赤になることから、「りんご病」とも呼ばれています。
4~10才位の子供が感染することが多く、一度感染すると終生免疫ができ
生涯二度と感染しないといわれています。
成人の約75%がりんご病の抗体を持っています。
りんご病の症状
りんご病の最大の特徴は両頬に出る赤い発疹で、
その症状が出ることでりんご病だと気がつく人も多いです。
発疹が出る1週間~10日ほど前には、
発熱・咳やくしゃみ・鼻水・筋肉痛・だるさ
といった症状が出ることもあります。
子どもの場合、発疹が現れてから1~2日後には肩や腕、
太ももにも赤い発疹が広がり、数日後にはその発疹が
まだらなレース編み模様のようになります。
発疹は痒みを伴うことが多いです。
発疹は10日前後で消えることが多いですが、
運動をしたり、日光を浴びたり、
ストレスによって再び現れることもあります。
発疹が出る前が一番感染力が高く、両頬に発疹が出た頃には
感染力はほとんどなくなっています。
そのため、発疹が出てりんご病だと気付いたときには、
家族や周りの人たちも既に感染してしまっている可能性が高い
という厄介な病気です。
しかも、大人では6割、子どもでも3割に頬や手足の発疹が出ない場合もあり、
症状がただの風邪のようなので、りんご病に感染していることに
気付かないこともあります。
りんご病の感染経路
りんご病は、主に咳やくしゃみなどによる飛沫感染で広がります。
しかし発疹が出る前が一番感染力が高いため、
気付かないうちに感染を広げたり、
感染してしまうことが少なくありません。
家族内に感染者がいた場合、
りんご病の抗体を持っていない人の感染率は50%とも言われています。
妊婦から胎児への母子感染や、稀なことですが輸血での感染もあります。
妊娠中にりんご病に感染した場合
ヒトパルボウイルスB19は、
赤血球の元になる赤芽球前駆細胞に感染し、破壊します。
赤芽球前駆細胞が破壊されると、
一時的に赤血球が生成できなくなり、
急激な貧血になってしまうことがあります。
妊婦さんの場合、
胎盤へうまく血液を供給できなくなってしまう上、
胎盤経由で胎児もりんご病に感染し、
赤血球が減少して胎児貧血に陥ってしまいます。
貧血が続くと発育が遅れて
低出生体重児になる恐れがあります。
さらに重篤化すると、むくみがひどくなり
胸やお腹に水が溜まってしまう胎児水腫となり、
早期発見できなかった場合は
胎児が死亡してしまうことが多いです。
厚生労働省の調査によると、
りんご病に感染した妊婦さんのうち70%が
流産や死産に至ったということです。
りんご病の治療方法
りんご病には治療薬もワクチンもありません。
妊娠中であろうとなかろうと、治療法は対症療法になります。
妊娠初期から臨月まで、すべての妊婦さんが
りんご病に感染する可能性はありますが、
特に12~20週がもっともリスクが高いとされています。
ただし、妊娠後期でもりんご病から胎児水腫に至った事例もあります。
胎児水腫が発見されるのは妊娠17~28週の間が一番多く、
妊婦健診の超音波検査で発見されることが多いです。
妊婦さんがりんご病に感染した場合、
まず血液検査で抗体の有無と感染時期の確認を行い、
経過観察を行います。
お腹の赤ちゃんに対しては、妊娠初期で胎児貧血の段階であれば、
妊婦さんのお腹から輸血用の針を刺して
赤ちゃんに輸血を行う「胎児輸血」で劇的に症状が改善します。
妊娠33週以降の場合は早期に分娩を行って、
輸血などの集中治療を行うことになります。
りんご病の予防方法
りんご病には予防接種もなく、抗体を得るには感染するしかありません。
すでに抗体を持っているかどうかは、血液検査で簡単に調べることができます。
【 りんご病の予防 】
・免疫力を向上させる
・りんご病が流行しはじめたら外出を控える
・マスクの着用、うがい、手洗いを徹底する
・風邪の症状のある人やりんご病の人との接触を避ける
など、感染を防ぐことが最重要になります。
また家庭内での感染を防ぐためにも、
パパや上のお子さんも一緒に予防を行うことが大切です。
そして、妊婦検診をきちんと受け、家族が感染してしまったり
妊婦さん自身に感染の可能性があるときは、
すぐに産婦人科を受診してください。
妊娠中でなければそれほど怖がる必要もないりんご病。
しかし妊娠中であれば、流産や死産など最悪の結果に繋がりかねません。
予防接種も治療薬もないため、家族で一丸となって予防することで
感染を防ぐことが大切です。
万が一感染してしまった場合は早期に治療が受けられるよう、
少しでも疑いがあるときには迷わず産婦人科を受診するようにしましょう。