つわりと妊娠悪阻の違いってご存知ですか?

 

妊娠初期の吐き気や嘔吐、頭痛、食欲不振などのつわりの症状は、
多くの妊婦さんの経験することです。

症状の内容や重さには個人差がありますが、
つわりを繰り返して症状が非常に重くなると、
「妊娠悪阻(にんしんおそ)」
という病名がつきます。

今回は、妊娠悪阻の症状や治療法、
気になる赤ちゃんへの影響や、病院へ行く目安など、
妊娠悪阻について詳しくご紹介します。

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妊娠悪阻とは

吐き気や嘔吐といったつわりの症状は、
多くの妊婦さんが経験する生理現象です。

妊娠悪阻はつわりの症状が病的に重くなり、
医師の治療が必要になったものです。

一般的なつわりは一時的なものであり
母子の健康にも影響はありませんが、
妊婦悪阻は母体が危険な状態に陥る事もあります。

もっとも危険なのが、水分すら摂れない状態になっても
繰り返される嘔吐により引き起こされる
「脱水症状」です。

命の危険があるため入院が必要になることもあり、
水分や栄養補給のため点滴治療が行われます。

妊娠悪阻を発症するのは
妊婦さん全体の1%程度とされており、
病気として一般的なつわりとは完全に区別されています。

つわりと妊娠悪阻の違いってご存知ですか?

 

妊娠悪阻の症状

妊娠悪阻は、第一期から第三期に向けて症状が重症化していきます。

第一期(嘔吐期)

常に吐き気があり、嘔吐を繰り返します。

次第に胃液や血が混じったものを吐くようになるほか、
食べ物を受け付けなくなるため体重が減少しはじめます。

水分も摂れなくなり、口の乾き、だるさ、
めまい、便秘などの脱水症状を引き起こし、
体内の水分がなくなるため尿の量も減り、
尿中にタンパクが出ることもあります。

第二期(肝腎障害期)

第一期の症状がさらに悪化し、
ケトン体(※)や尿タンパクで陽性が出るようになります。

脈拍や血圧が下がり、代謝異常による中毒症状が起こり、
入院が必要になることもあります。

※ケトン体とは

肝臓が脂肪を分解することにより作られるものです。

通常、人間は食事で得たエネルギーを消費して活動していますが、
食事ができず飢餓状態になると
脂肪を消費して生命維持活動を行います。

ケトン体が基準値よりも多く作られている場合、
身体が飢餓状態に陥っていると判断できます。

第三期(脳障害期)

めまいや幻覚、幻聴、記憶喪失や視力障害、
昏睡状態などの脳神経症状が現れます。

母体・胎児ともに非常に危険な状態になり、
母体を守るために中絶手術を
しなければならない場合もあります。

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妊娠悪阻の治療法

入院となった場合、既に脱水症状に陥っている場合が多いです。

そのため基本的に寝たきりで安静にしながら、
点滴で水分とブドウ糖やアミノ酸、ビタミンなどの栄養を補います。

病院によっては、漢方薬が処方される場合もあります。

点滴で症状が緩和したら、少しずつ食事ができるように
身体を慣らしていきながら、症状が落ち着くのを待ちます。

入院期間は、症状の重さなどにより個人差があるため
一概には言えませんが、数日で退院する方も入れば、
数ヶ月かかる方もいます。

入院が長引くと体力や筋力が落ちてしまうので、
退院後もしばらくは自宅療養が必要となることがあります。

なお、妊娠悪阻は病気なので、入院治療費には保険が適用されます。

つわりと妊娠悪阻の違いってご存知ですか?

 

赤ちゃんへの影響は?

食べることも飲むこともままならない妊娠悪阻。

体重もみるみる減ってしまい、
お腹の赤ちゃんに栄養が届かないのではと心配になりますよね。

胎盤の完成する14~16週頃までは、

卵黄嚢
(超音波検査で赤ちゃんの周りに見える丸のこと)
が胎児に栄養を供給していますので、

お母さんが食事を摂れなかったとしても問題はありません。

発育への影響もほとんどないと言われています。

ただ、
あまりにも重篤な妊娠悪阻の妊婦さんの一部には、
低体重が見られるという報告もありますので、注意は必要です。

つわりと妊娠悪阻の違いってご存知ですか?

 

妊娠悪阻チェック

次の6つのチェック項目に当てはまるものがある場合、
医師の診断を受けることをお勧めします。

1.常に吐き気・嘔吐があり食事も水分も受け付けない

2.吐いたものに血や胆汁が混じる

3.短期間に体重が急激に減少した

4.トイレの回数が極端に減る/
トイレに行っても尿が少ない(出ない)

5.起きていられないくらいめまいや頭痛が酷い

6.日常生活がおくれない

「まだ大丈夫」「我慢できる」「そのうち良くなる」
と我慢しているうちにさらに症状が悪化し、母体と胎児の命を危険に晒しかねません。

診察の際、1日の食事の回数と量、水分の摂取量、
トイレの回数や何kg体重が減少したのかなどを
具体的な数字を伝えると、医師もそれが通常のつわりなのか
妊娠悪阻なのかを判断しやすくなります。

つわりと妊娠悪阻の違いってご存知ですか?

 

妊娠悪阻の対策

つわりがある時の食事は一日三食にこだわらず、
食べられるときに、食べたいものを、
食べられる量だけ食べるようにしましょう。

サプリメントで栄養補給を行っても良いでしょう。

飴やガムを口にしたり、柑橘系やペパーミント系のにおいを嗅ぐと
吐き気が緩和する人もいます。

それでもどうしても辛いとき、
「妊娠悪阻チェック」の項目に当てはまるときは、
迷わず医師の診療を受けましょう。