妊娠中の目安を超える、カフェイン摂取が危険な理由

毎朝、目覚めのコーヒーを一杯飲むという方も多いでしょう。カフェインの入った飲み物は、眠気覚ましに効果的です。コーヒー以外に日常的に口にしている緑茶でもカフェインが入っているので、私たちは意識していないうちに案外カフェインを摂取しています。

さて、妊娠中に気をつけなくてはならないことに、カフェインの摂りすぎがあげられます。しかし、なぜ妊娠中にカフェインが良くないのでしょうか。また、どのくらいであれば大丈夫なのでしょうか。今回は妊娠中のカフェイン摂取の目安について、お伝えいたします

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「カフェイン」とは?

そもそもカフェインとは何かといいますと、アルカロイドという化合物の一種で1819年ドイツの化学者ルンゲによって、コーヒーから取り出されカフェインと名付けられた物質です。

興奮作用があるため眠気を覚まし、集中力を増す効果があります。解熱鎮痛作用や利尿作用もあり、一般的な風邪薬や鎮痛剤、栄養ドリンクにもカフェインが利用されています。

また、薬としてだけでなくコーヒーから発見された成分であるように、カカオやお茶の木などの植物に自然とカフェインは存在してるので、それらを原料として作られたココアやお茶といった飲料にも当然カフェインが含まれます。

妊娠中の目安を超える、カフェイン摂取が危険な理由

カフェインの副作用とはどんな症状?

これほど身近な成分であるカフェインですが、摂りすぎによる副作用も報告されています。不眠やめまい、常用すると頭痛、血圧上昇など数々の症状が起こる可能性があるのです。

「カフェイン中毒」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。カフェインには依存性があるため、飲み物や薬を常用し過剰摂取を招くと中毒症状が出てしまいます。重症化すると、精神錯乱や幻覚、幻聴、妄想といった精神症状、吐き気や嘔吐、痙攣などの身体症状が出て、少ないものの死亡例も報告されています

さらに近年増加している骨粗鬆症へのリスクが高くなります。これはカフェインの利尿作用により、カルシウムが尿と一緒に排泄されてしまい、カルシウムの吸収も阻害するために、元々カルシウムの摂取が少ない人は骨がもろくなってしまうためです。同様に鉄分の吸収も阻害するために、特に女性は貧血になりやすくなります。

このように、カフェインは法的に禁止された薬物ではありませんが、過剰な摂取は体に悪い結果を引き起こします。お腹で赤ちゃんを育てている時に、たくさん摂取することが良いとは思えませんよね。

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妊娠中の摂取目安量を超えるカフェイン摂取は危険?

ではもし、妊娠中に過度のカフェインを摂取すると、母体や胎児にはどう作用してしまうのでしょうか。

妊娠中は肝臓にあるカフェインを分解する酵素が減るため、普段よりもカフェインの分解に時間がかかります。時間がかかるということは、体内にカフェインが溜まりやすく、中毒症状も出やすくなりますし、胎内の赤ちゃんにも胎盤を通してカフェインの成分が行きやすいということです。

胎児は抵抗力や免疫力などが弱いので、よりカフェインの影響を受けやすいとされています。またカフェインの血管収縮作用によって、胎児へ送られる血液量が減り発育が阻害され、流産のリスクも高まります。低体重児が生まれることや、流産や死産という悲しい結果にならないためにも、妊娠中はカフェインの量に気をつけなければならないのです。

妊娠中の目安を超える、カフェイン摂取が危険な理由

妊娠中に摂取できるカフェインの量は?

ではどの位までならカフェインを摂取できるのかというと、世界各国が出している過剰摂取についての報告で、妊婦や授乳婦についても触れられています。

世界保健機関(WHO)では、妊娠中はコーヒーを1日3~4カップまでと呼び掛けていますし、欧州食品安全機関(EFSA)では、妊婦と授乳婦は1日200mgまでならば、胎児や乳児に影響しないとしています。さらに、英国食品安全庁(FSA)はコーヒー1日2カップ200mgまでとして注意喚起を行っています。日本でも、厚生労働省や農林水産省が、これら各国の文書を紹介しながら注意を促しています。

ドリップコーヒーは100mlに約90mgのカフェインが入っているので、1日2杯以内であればどの基準にも当てはまることになります。ただし、その人の体格や体質、淹れ方、カップの大きさなどでも1カップのカフェイン量が違いますから、妊娠中はできるだけ少なく済ましておいた方が安心ですね。エスプレッソコーヒーでは、100mlに300mgも入っていると言われています。また、コーヒーだけでなくココア(100mlに約30mg)や紅茶、緑茶(100mlに約20mg)にもカフェインが含まれていることを忘れないようにしましょう。

妊娠中の目安を超える、カフェイン摂取が危険な理由

妊娠中に飲んで安心なノンカフェイン飲料とは?

カフェインが妊婦に適していないのはわかるけれど、コーヒーを毎日飲んでいた方が突然止めるのは辛いものですね。「いったい代わりに何を飲んだらいいの?」と困ってしまうでしょう。

でも最近はノンカフェイン飲料も手に入りやすく、様々な種類が販売されています。ここでその一部をご紹介しますので、是非試してみてください。

たんぽぽコーヒー

たんぽぽコーヒーは、コーヒーと呼んでいますがコーヒー豆は使っていません。たんぽぽの根っこの部分を焙煎して作られていますので、カフェインを含まず妊娠中も安心です。

また、たんぽぽの根は漢方薬としても使われていて、利尿作用や血行促進効果があります。食物繊維を含み便秘の改善にもなりますから、妊娠中に便秘になりやすい女性には助かる飲み物です。さらに、タラキサンシンという成分が母乳分泌を促進するため、産後にも最適とされています。

たんぽぽ茶と呼ばれる製品は、根だけでなく葉も使ったものが多いのですが、どちらも同じものです。コーヒーと思って飲むと違和感があると思いますが、女性の体には効果的な飲み物です。

ルイボスティー

ルイボスという植物の葉から作られたお茶で、ノンカフェインです。ハーブティーは種類により子宮収縮作用があり、妊娠中に飲めないものもあります。しかしこのルイボスティーは妊娠中にも安心して飲むことができます。

ルイボスティーにはポリフェノールフラボノイド類の抗酸化作用をもつ成分があり、美肌効果や免疫力を高める効果があります。また、妊婦に不足しがちな亜鉛や鉄分、カルシウム等のミネラルが含まれているため、お勧めの飲み物なのです。

紅茶専門店ではルイボスティーに、他のハーブをブレンドしたノンカフェインの茶葉も販売しています。様々な香りや味が楽しめますが、妊娠中に飲んでも大丈夫なハーブか確認してから購入しましょう。

麦茶

知らない人はいないであろう身近な飲み物、麦茶もノンカフェインです。パックでたくさん作ることもできますし、ペットボトルでも手軽に買うことができますね。普段の飲み物にするにはもってこいです。また、子どもの飲み物としても最適ですから、産後も長く家族で飲むことになるでしょう。

麦茶のピラジンという成分は血流を促す作用があり、これが冷え性に良いとされています。また、Pクマル酸が活性酸素を除いてくれ、糖尿病などの生活習慣病を予防してくれます。たんぽぽコーヒーと同じく、乳腺のつまりを取り母乳を出やすくする効果もあります。

妊娠中の目安を超える、カフェイン摂取が危険な理由

まとめ

カフェインは良い効能もありますが、過剰に摂取すると健康な成人でも副作用が起きます。妊娠中は胎児への影響を気にしながら生活してくださいね。

ご紹介したように、様々なノンカフェイン飲料がありますので、妊娠前からこういった飲み物に慣れておくのも良いかもしれません。

どうしてもカフェインを含んだ飲み物から離れられない場合は、1日1杯など少ない量を楽しんでストレスを溜めないようにしましょう。コーヒーでも、カフェインを取り除き少なくしたデカフェや、カフェインレスのものを選ぶようにすれば、より安心して飲むことができますね。