日本脳炎は子供に受けさせる定期の予防接種の1つです。最近では日本脳炎に感染したという話をあまり耳にしなくなったため、日本脳炎の予防接種を受ける必要性をあまり感じない方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、日本脳炎という言葉が聞きなれない言葉になったのには、日本脳炎の予防接種を定期接種にし国をあげて感染予防をしたという歴史があるからなのです。
今日は我が子を「日本脳炎」から守る予防接種の基礎知識についてご紹介します。少なくはなりましたが、今だに日本脳炎に感染する人は存在します。日本脳炎がどんな病気なのか、また予防接種についての知識を知って、大事な我が子を日本脳炎から守ってあげましょう。
そもそも「日本脳炎」はどんな病気?
日本脳炎とは人から人へ感染する感染症ではなく、蚊を媒介して感染する感染症です。豚などの体内で日本脳炎ウイルスが増殖します。その後に蚊がその豚を刺し、その蚊に人が刺されると感染します。
ウイルスに感染した蚊に刺されたから必ず発症するという訳ではないのですが、発症した場合、高熱や頭痛、嘔吐や意識障害などを起こします。風邪に似た症状で終わる人もいますが、脳炎になった場合には死亡率が発症者の20~40%という大変怖い病気です。
また、日本脳炎は感染し高熱などの症状が現れたときには、日本脳炎ウイルスが脳にまで到達していることが多いため、脳細胞の破壊が始まってしまうのも特徴で、日本脳炎に対する特効薬がない現状では、対処療法で乗り切るしかない状態です。命が助かったとしても後遺症が残るケースが多くみられることを考えてみても、感染する前に予防接種で予防することはとても重要なことです。
日本脳炎の予防接種を受ける時期と費用
日本脳炎は予防接種を受けることによって75~95%罹患リスクを下げることが出来ます。では、日本脳炎の予防接種について詳しくみていきましょう。
予防接種を受ける時期
日本脳炎の予防接種を受ける時期は大きく分けて1期、2期に分けることが出来ます。
1期の対象者は生後6か月から90か月までです。標準とされる接種時期は3歳に1回目を接種し、1回目から1~4週間間隔を空けて2回目を接種します。2回目接種の1年後(4歳~5歳の間)に追加接種を1回行います。
2期の対象者は9~13歳未満です。標準的には9歳から10歳までの間に1回接種します。
「標準接種期間」と示した理由は、九州地方など気候が暖かく、蚊に刺される危険性が他より高い地域では標準接種時期より前に予防接種を受けることを推奨している地域もあるからです。日本脳炎の予防接種は日本脳炎ウイルスを媒介させる蚊の多さに左右されますので、住んでいる自治体の推奨する期間に接種するのが理想です。
予防接種の費用
日本脳炎の予防接種は国が接種を推奨する定期接種のワクチンに分類されますので、指定された期間に予防接種を受ければ無料で接種が可能です。自治体によって、定期接種を受ける際にクーポンが必要だったり、病院に直接行っても無料で受けられたりと、管理の方法が様々ですので、引っ越して市町村が変わった場合などは役所や保健所などに問い合わせてから受けるようにすると安心です。
また、定期接種の指定期間を過ぎてしまった場合には、任意接種となり全額自己負担となりますので注意しましょう。
予防接種を受けた後は「副反応」に要注意
薬を服用する際に「副作用」の注意書きがあるように、予防接種を受ける場合にもワクチンの効果以外の作用が体に現れることがあります。これを「副反応」といいます。
日本脳炎の予防接種後の副反応としては、他の予防接種でもみられるような、37.5度以上の発熱、頭痛、倦怠感や吐き気の他、接種部位が赤くなったり腫れたりすることが報告されています。また、まれに接種した直後から翌日に発疹や蕁麻疹がみられることもあります。
重篤な副反応としては、接種後数日~2週間の間に意識混濁など急性散在性脳脊髄炎の症状があらわれることがありますので、接種後、体に異常が現れた場合には受診の際に予防接種を受けた旨を医師に伝えるようにしましょう。
20歳未満の方は予防接種の履歴の確認を
日本脳炎の予防接種は副反応とされる急性散在性脳脊髄炎が問題となり、平成17年から21年度にかけ、国は積極的推奨を控えていたという経緯があります。日本脳炎の予防接種を定期接種から外したわけではないのですが、副反応を心配し、この時期、日本脳炎の予防接種を控えた保護者が沢山いらっしゃいます。
現在では、ワクチンの内容を乾燥細胞培養ワクチンに変更し、日本脳炎の予防接種による急性散在性脳脊髄炎の発生率は他のワクチンと同程度となっていますので、平成17年から21年度の間に定期接種の時期が被っていた方は一度、母子健康手帳等で日本脳炎の予防接種を受けているかどうか確認してみましょう。もし、予防接種が未接種の状態だということがわかりましたら、かかりつけの内科やお住いの市町村の役所か保健所に相談することをお勧めします。該当期間の方であれば、定期接種の指定期間を過ぎてしまっても特例として無料で予防接種を受けることが出来ます。